unikki

隙間を埋める生活

ちょっとグロテスクなお話。

二リットルの水を開けた直後、ペットボトルのキャップが手から転がり落ちる。あ、と思うときにはもう遅い。猫達の手によって、あっちへコロコロ、こっちへコロコロ。最後には自分らのトイレに入れる(うちの猫達は、なぜか興奮するとおもちゃをトイレに入れるという最悪な癖がある)。水を片手に立ち尽くした。

午後、母親が親指の一部を包丁で切り落とす。想像以上に凄まじくて、骨が見えていたので、慌てて救急病院に行った。母親が処置を受けていた間、小川洋子の『薬指の標本』とギレルモ・デル・トロの『シェイプ・オブ・ウォーター』を思い出していた。今は『薬指の標本』が手元にないので、うろ覚えだけど、主人公の「わたし」は、以前、ソーダの工場で働いていて、そのとき事故で薬指の先っぽを切り落としてしまう。薬指の先っぽは、ソーダの壜の中で、しゅわしゅわと透明を染めた。そんな部分が頭に浮かんだ。

加えて、『シェイプ・オブ・ウォーター』は2018年のアカデミー賞に輝いた作品。話せず手話を必要とするイライザが、職場である機密機構の研究所で不思議な生物と心通わせていく内容、で合ってるはず。わたしが思い出したのは、もちろん軍の狗であるストリックランドの指。医療業務者の戯言として聞いて欲しいのですが、肉というのは案外、丈夫なもので、すぐに付けて固定すると治る場合が多い。まあ、小さな部分の話です。ストリックランドのは、骨から切断された指。それは、不思議な生物に切り落とされてしまうんだけど、すぐにくっつけてぐるぐる包帯で縛っておしまい。だから、自分の立場が危うくなっていくのと比例して、指はだんだん腐っていく。黒く変色し、腐臭が立ち込めていて、とうとう運転手に「臭いです」と言われてしまい、ストリックランドは指を身体から引き剥がす。

母親の一部は、ソーダの壜に入ることもなく、今のところは腐るわけでもない。とりあえずは。処置としては、消毒をして、くっつくのを待つ。もし、くっつかずに壊死したら、感染症に気をつけながら、骨を剥き出しのまま自然治癒に頼るしかない。どうにかくっつきますように。


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